この仕事は続けてはいけません

この仕事は要注意です

できることなら

この仕事は続けてはいけません

 

借金回収屋

家賃回収屋

取り立て屋

 

誰かにありがとうと言ってもらう

別の仕事に

今すぐ変わってください

 

一昨年、目標のフルマラソン完走を達成して

昨年、サブ4を目標にしたものの

コロナを言い訳に目標未達成の

天然パーマの兼業主夫です

 

不動産業14年目の私が

不動産業の業務で一番

誰も幸せにできず

誰もうれしくなくて

誰のためにもならなかった

不毛で空しく

とても大きい失敗をした業務は

滞納家賃の回収業務です

 

世の中の賃貸契約の中には

必ず一定数

家賃を約束の期日までに払われないことが起こります

その理由は様々で

うっかり忘れや旅行に行っていた等は

契約者にお知らせするだけで問題ないのですが

病気や事故、勤め先の倒産、リストラ等で金銭的に困窮し

支払いがこの先見込まれない

このような理由の場合は早期に退去し

安い家賃のところへ引っ越すか

そこも支払い不能と見込まれる場合は

最後は生活保護に頼ることになります

よって

この流れの通りにさっさと淡々と進めれば

テレビドラマで見るような張り紙や

深夜、早朝の訪問、暴力的な言動、

カギを交換するなどの

法律で禁止されているような取り立ては本来不要で、

誰も不快な思いをせずに

機械的にゴールにたどり着くはずなのです

 

しかし

人は自分の意志の力で

コツコツ支払いを組み立てたり

一度上がった自分の生活水準を下げることは

とてつもなく難しいのです

まず何とかしようと金策にもがきます

滞納発生後1か月経過はすぐきます

次の家賃支払いが発生

債務額は当初の倍です

心は乱れ冷静ではいられなくなり

適切な判断はできなくなる

さまざま金策に走ります

高利の消費者金融やカードローン

身内や友人知人に頼みまくり

完全に孤独になる

現実逃避のために

お酒やギャンブルをして依存症になる人もいます

そして負のスパイラルに

 

どの人も最初は悪意がなく滞納します

でも最初は悪意が無かったのに

なんとかしようともがき、うまくいかないと

連絡は取れなくなり

カンタンに嘘をついたり

言葉が乱暴になったりします

 

私は30代前半のころ結婚して

娘を授かりました

 

当時、私が担当していた契約者Sさんが

突如家賃の支払いが遅れました

地元の中小企業にお勤めで

うっかり忘れと思っていましたが

支払いの遅れは続き

あっという間に4か月滞納

すでに電話に出ない、訪問しても居留守

連絡は取りにくくなって

支払いの約束を何度も嘘つかれました

 

まだこの業務に未熟だった私は

契約違反である家賃滞納をしているSさんを

とにかく責めて少しでも多く滞納家賃を

回収しようとしました

 

月に何度も訪ねて強い言葉や態度で

その場で持っているお金を回収しました

ひどいときはSさんが持っていた千円だけを

回収したこともあります

 

その強行姿勢により

最終的にSさんは必死にまとまったお金を金策

滞納家賃を完済させ

どこかへ引っ越していきました

私は未払い家賃が回収出来たという

自分の業務成果に満足していました

 

しかしまもなく、業務経験を積むことで

自分の業務の誤りを悟りました

相手を不毛に責めることなく

肯定的に信頼関係をつくり

相手の状況をくみ取って

良策を打ち、適切に導いて

傷口を最小にすることができるようになり

家を買ってもらったこともありました

 

これまでの本当に大きな失敗を反省しました

 

数年後

私は

娘の保育園の親子参観イベントに行きました

娘がクラスでとても仲良しになっている女の子と

ものすごく楽しく遊んでいました

その子のことは娘の話によく出てきていたので

すぐ、この子があの子だなとわかり

とても微笑ましく参観していると

その子の親御さんらしき人が

遅れて教室に入ってきたのを見て

背筋が凍り付きました

 

Sさんでした

 

Sさんも私に気づきました

私はとにかく当時の非礼を謝りました

Sさんは私を無視するに近い不快な様子でした

 

それから

娘とSさんの娘はずっと仲良しで

なんども保育園行事や送り迎えの時などで

Sさんに会いました

 

私はSさんに会うたびに当時の非礼を謝りました

私を無視するに近い不快な様子のSさんに

なんども謝り続けました

私にはそれしかできませんでした

 

何度何度も謝りつづける私に

あるときSさんが

はじめて話をしてくれました

 

「○○さん、私はあの時のあなたを許すことはできません。でも、○○ちゃん(私の娘)はうちの子にとても仲良く本当に優しくしてくれています。○○ちゃんのお父さんである今のあなたは、あの時のあなたではないと私は思います。

○○さん、もうすぐ卒園です。もう、謝らないでください。」

 

初めて笑ってもらえました。

 

私は自分の大きな過ちを

娘にたすけてもらえました

 

Sさんによると

当時Sさんは仕事に大きなストレスを抱えていました

その時にたまたま友人についていった競艇場でハマり

最終的にギャンブル依存症になってしまったようです

ギャンブル依存症

本人の弱い心が悪いと思われがちですが

一定数発生するれっきとした病気なのです

病気の人を責めてもお互い無駄に心を消耗します

大切な身内の場合は医療の力で対応し

そこまでの関係ではないのならば

距離をおいてあげて金策に応じないのが

回復のためになります

本人の自覚がなかなかもてないのが

本人の心をさらに辛くさせ自力回復を難しくさせます

Sさんの場合は奥さんが献身的に諦めずに

とことん向き合ってくれたことで

成長する娘さんのため

回復することができました

 

回収業務をする人で

不良債務者を悪、それに対峙する自分に

少しでも間違った変な正義感や

醜い優越感を感じている人は要注意です

 

この仕事は「責め」を使ってはいけない

 

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